何処へ行く

暇をつきつめる

『家族を想うとき』をみました

 ハートフルでアットホームな家族の映画を想像して観に行った。

その期待は見事に裏切られることになる訳だが、とてつもなく、えげつないぐらい動揺させられてしまう内容で、面白いとか感動したとかそういった感情ではないけれど今年一番の映画だったのではないかと思う。(今年一番といってもそう多くの作品を見たわけではない)

夫婦と子供2人の4人家族が生活することがこんなにも難しいのかと考えさせられた。イギリスの話だしフィクションではあるけれど、実際の日本もこれと似たような環境にあるような気がする。UberEats配達員の組合結成のニュースを見てUberの雇用形態って個人事業主的なものになるんだから、なんかアホらしい事言い出したなあと思っていたけれど、その仕事を選ぶことしか出来ないと思ってしまった人達には確かに必要なのかもしれないと思った。(まだ他人事のようにしか感じられてはいない)

父親は家族のために自分の身を削ってお金を稼ごうとする。母親は社会貢献のためか、やりがいがあるのか多くの人がやりたがらない高齢者介護の仕事をする。長男は勉強はできるが将来への明るい想像ができず勉強することの意味が分からなくなったり、絵を描くことが好きなのにそれを表現する場所が分からず非行に走り壁に絵を描く。長女は勉強もできるし真面目で明るく素直なのだが不安定な家庭環境から精神が不安定になり不眠症になってしまう。

家庭環境はとても不安定で良い方向に振れているときの会話はとてもユーモアがあって笑える場面もある。悪い方向に振れた時は家族の行動それぞれが負の連鎖になってしまいみているのが辛くなった。このような状況になってしまうと家族とか個人とかそういった小さな単位ではどうしたって良い方向に転換していくのは難しいのかなと思う。国だったり地方自治体だったり公的な支援を頼ることが望ましいのではと考えたが、冒頭の父親の発言の「生活保護は受けられないね。そんな情けないことはできない。」みたいな言葉が重くのしかかる。唯一ではないにしても、その選択をとれば少しだけでも余裕が出来ていたかもしれない選択肢を自ら捨ててしまう。とても勿体無いと思うが、それを選ぶ余裕もない状況だったのかもしれない。どうすればよかったんだ。

みていてとても辛くなるが最後にはなにか救いの手を差し伸べてくれるのではと期待して見ていても、最後の最後まで負の連鎖が続いてしまう。こんな悲しく辛い物語があっていいのか。この映画をみた私たちには何ができるのだろうか。年末に現代の問題を叩きつけられた映画だった。